保育園経営の年収はいくら?形態別の収支と稼ぐ方法を解説

公的統計に「保育園経営者の年収は◯◯万円」という一律の数字は存在しません。なぜなら、収入の中心は園児数と公定価格で決まり、そこからいくらを自分の報酬に回すかは経営者が決めるからです。
この記事では、形態別の収益構造、収支シミュレーション、補助金や複数園展開で年収を伸ばす方法、そして開業から黒字化までのリアルなお金の流れまで、私の実体験と公的制度の事実をもとに整理します。読み終わる頃には「自分なら踏み出せるか」を判断する材料がそろうはずです。
保育園経営の年収とは?最初に知っておきたい結論

先に結論を言います。保育園経営の年収は「収入−経費」で残った利益の中から、自分にいくら役員報酬を払うかで決まります。決まった給与表があるわけではありません。
そして収入の大部分は、自分の頑張りより制度で決まります。認可保育所の運営費は国の公定価格をもとに算定され、自治体から施設型給付費または委託費として支払われるからです。
保育園経営者の年収の目安
正直に書きます。信頼できる公的統計に「経営者の全国平均年収」は見当たりません。だから私はここで「平均◯◯万円」と断言しません。
言えるのは構造です。収入は園児数・年齢構成・定員・地域区分・施設形態で変わり、同じ「保育園経営」でも収入差が出ます。そこから人件費や家賃を引いた残りが、報酬の原資になります。
保育士と経営者の年収差
保育士として現場で働く場合、収入は給与として安定します。一方、経営者の収入は園の業績にそのまま連動します。
つまり経営者は、上振れもするし下振れもする。私が開業直後に痛感したのは、最初の数か月は「保育士時代の給料すらない月」が普通にあるということでした。安定を捨てて、上限を取りにいく働き方です。
「経営者」と「雇われ園長」の違い
ここを混同している人が多い。園長として雇われる立場と、園を所有して経営する立場は別物です。
雇われ園長は給与が決まっていて、赤字の責任を負わない代わりに、利益を取れません。経営オーナーは赤字リスクを全部背負う代わりに、利益のすべてが自分の取り分になる可能性がある。リスクの取り方がまるで違います。
| 項目 | 雇われ園長 | 経営オーナー |
|---|---|---|
| 収入の形 | 給与(安定) | 役員報酬+利益 |
| 赤字の責任 | 原則負わない | すべて負う |
| 年収の上限 | 給与水準で頭打ち | 園数・利益しだいで伸びる |
| 下振れリスク | 小さい | 大きい(無報酬月もあり得る) |
形態別に見る保育園経営の収益構造と年収の違い
年収を理解する近道は、形態ごとに「お金がどこから入るか」を押さえることです。ここが認可・認可外・小規模・企業主導型でまったく違います。

認可保育園の収益と補助金の仕組み
認可保育所の収入の柱は、利用者の保育料ではありません。自治体から支払われる施設型給付費または委託費です。金額は国の公定価格で算定されます。
しかも2019年10月の幼児教育・保育の無償化で、3〜5歳児の保育料は原則無償化されました。つまりその分は公費でまかなわれ、園の収入の安定度は高いと言えます。
ただし0〜2歳児は、住民税非課税世帯を除き保育料の負担が残ります。0〜2歳が中心の小規模園では、ここの徴収や減免の仕組みも収入に関わってきます。
認可外・小規模・企業主導型の収益構造
認可外保育施設は構造が違います。収入の中心は利用者から受け取る保育料で、自治体補助の有無や内容は施設・自治体ごとにばらつきます。
小規模認可(地域型保育事業)は0〜2歳が対象で定員19人以下。私が運営したのもこのタイプです。少人数なので売上の天井は低いものの、認可なので給付費が入る、という中間的な位置づけでした。
形態ごとの収入の出どころを、ざっくり並べておきます。
| 形態 | 収入の中心 | 公費の安定度 | 定員規模の目安 |
|---|---|---|---|
| 認可保育所 | 施設型給付費・委託費 | 高い | 60〜100人台が多い |
| 小規模認可 | 給付費(0〜2歳) | 高い | 定員6〜19人 |
| 企業主導型 | 運営費助成+利用料 | 中程度 | 施設ごとに設定 |
| 認可外 | 利用者の保育料 | 低い〜なし | 施設ごとに設定 |
個人事業主・株式会社・社会福祉法人による違い
経営形態でも手取りや税の扱いが変わります。個人事業主なら利益がそのまま所得、株式会社なら役員報酬という形で自分に支払い、残りに法人税がかかります。
社会福祉法人は税制上の優遇がある一方、剰余金を自由に配当できないなどの制約があります。「儲けを自分の財布に入れる」という発想とは相性が良くない。どこで稼ぎを受け取りたいかで、選ぶ器が変わります。
経営規模と年収の関係
単純な話、園が大きく、園児が多いほど収入は増えます。公定価格は定員や年齢構成で算定されるため、稼働している園児数がそのまま売上に効きます。
ただし大規模ほど人件費も家賃も重くなる。規模を追えば年収が比例して増えるわけではない、というのが現場感覚です。
保育園経営の収支シミュレーションで見る年収の実態
数字の話をします。ここを飛ばして「儲かるらしい」だけで始めると、確実につまずきます。収入の柱が公定価格で決まる以上、経費をどう抑えるかが年収を左右します。

売上・人件費・経費の内訳の目安
保育園のコストで圧倒的に大きいのが人件費です。配置基準で必要な保育士数が決まり、その人件費の原資も公定価格に組み込まれています。
2024年度には保育士の配置基準の見直しが進み、こども家庭庁は保育士等の人件費について過去最大規模の改善を公表しました。人件費の原資が制度で決まる、という前提を必ず押さえてください。
私は具体的な利益率を断定できる公的数字を持っていません。だから架空の「利益率◯%」は書きません。ただ実務上、人件費が経費の大半を占め、残りに家賃・給食費・光熱費・備品が乗る、という順番は変わりません。
定員充足率と稼働率が利益を左右する理由
ここが一番大事です。公定価格は園児数で算定されるため、定員が埋まらないと収入が立ちません。一方で配置すべき保育士は確保しておく必要がある。
つまり「園児は少ないのに人件費は満額」という最悪の状態が起きやすい。私が見てきた赤字園の多くは、この充足率の低さが原因でした。集客と定員管理は、年収に直結する経営課題です。
役員報酬の決め方と手取りを増やす考え方
法人経営なら、自分への役員報酬をいくらに設定するかを自分で決めます。これが事実上の「経営者の年収」です。
高く取りすぎれば手元の運転資金が細り、低すぎれば生活が苦しい。私の感覚では、開業1〜2年目は報酬を抑えて園を太らせ、安定してから引き上げるのが現実的でした。手取りの最大化は、税理士と相談して設計する領域です。
年収を上げるための具体的な方法

収入の柱が制度で決まるなら、年収を上げる手は限られます。補助金を取りこぼさない、規模を増やす、人件費を適正に保つ、そして最後に売却。この4つです。
補助金・助成金・融資を活用する
開業時の負担を左右するのが施設整備の補助です。保育所等整備交付金など、新設・改修・老朽化対策で補助対象になる制度があります。
家賃補助は自治体制度として存在しますが、全国一律ではありません。有無・上限・対象要件は自治体ごとに違います。物件を決める前に、必ず開設予定地の自治体に確認してください。ここを調べずに高い家賃で契約すると、毎月の固定費が利益を食い続けます。
複数園の運営で収入を伸ばす
1園あたりの収入は公定価格で頭打ちになりやすい。だから本気で年収を伸ばす経営者は、複数園展開に進みます。
園が増えれば給付費の入りも増え、本部機能を共有して経費を圧縮できます。ただし管理する人とお金が一気に増える。1園でつまずいている段階で広げるのは、私は勧めません。
保育士不足と人件費をどうコントロールするか
保育士が採れないと園は回りません。採用難で人件費が高騰すれば、利益はそのまま削られます。
とはいえ人件費を削れば離職が増え、もっと採用にお金がかかる。私は「削る」より「辞めさせない」に投資するほうが、結局は安く済むと考えています。配置基準を満たしつつ、定着で回す。ここが経営者の腕の見せどころです。
事業売却による資産形成という選択肢
あまり語られませんが、育てた園を売却して資産化する道もあります。安定した稼働率と黒字実績がある園は、引き継ぎたい法人にとって価値があります。
毎月の役員報酬とは別に、出口でまとまった対価を得る。長期で年収を考えるなら、頭の片隅に置いておく価値はあります。
開業から黒字化までの現実とお金の流れ
ここは慎重に読んでください。開業直後は、ほぼ確実にお金が出ていくだけの時期があります。認可は自治体の認可を経て運営する仕組みで、開設準備に時間とお金がかかるからです。

開園初期は収入が不安定になる理由
理由は単純です。園児がまだ集まっていないからです。定員が埋まるまで給付費は満額入らないのに、保育士は開園日から配置しておく必要があります。
私の小規模園も、満員までしばらくかかりました。その間も家賃と給料は容赦なく出ていく。開業初期は赤字が前提、と腹をくくっておくほうが健全です。
黒字化までの期間と資金繰りの目安
黒字化までの期間を「◯か月」と全園に当てはまる数字で言うことはできません。立地・定員・採用状況でまったく変わるからです。
だから私が必ず伝えるのは、運転資金と自分の生活費を別建てで用意しておくこと。園が黒字になっても、最初の数か月は自分の報酬をゼロに近く設定する覚悟が要ります。生活費の蓄えがないまま始めるのは危険です。
経営を長く安定させるためのポイント
安定の核は、稼働率を高く保つことと、保育士が辞めない環境です。働きやすさは採用コストと定員充足の両方に効きます。
そして地域とのつながり。近隣の園や自治体の担当者と関係を作っておくと、制度変更や募集の情報が早く入ります。地味ですが、ここが効きます。
失敗・廃業事例から学ぶ赤字化のパターンと回避策
うまくいく話より、こちらのほうが役に立つはずです。赤字に落ちる園には共通点があります。

赤字に陥りやすい典型パターン
一番多いのは定員が埋まらないまま固定費が走り続けるケース。次に多いのが、家賃の高い物件を勢いで契約してしまうケースです。
収入の柱が公定価格=園児数で決まる以上、集客の見込みが甘い計画は危うい。私は開業相談を受けるとき、まず「その地域に本当に園児がいるか」を確認します。ここを飛ばす人が、後で苦しみます。
地域・自治体ごとの補助金差による収入格差
同じ規模の園でも、自治体によって収入が変わります。家賃補助や整備補助の有無・上限が地域ごとに違うからです。
公定価格にも地域区分があり、地域によって単価が異なります。「隣の市では補助が出るのに、こちらでは出ない」は普通に起きます。開設地は、補助制度まで含めて選ぶべきです。
簡単には大儲けできないという現実
率直に言います。保育園経営で楽に大儲けはできません。収入の上限は制度で決まり、人件費は削りにくく、赤字の責任は全部自分が負います。
それでも腰を据えてやれば、雇われでは届かない年収に手が届く余地はある。短期で儲けたい人には向かない、というのが私の正直な結論です。
保育園経営の魅力とリスク、経営者の心得

お金の話を散々したので、最後に立場を取って書きます。私はそれでも保育園経営を始めて良かったと思っています。理由は年収だけではありません。
社会貢献としての保育園経営の魅力
待機児童や働く家庭の支えになる仕事です。無償化で家庭の負担が軽くなった分、保育の受け皿としての公共性は高い。
自分の理想とする保育を、自分の園で実現できる。これは雇われていた頃には味わえなかった手応えでした。
経営にともなうリスクと注意点
一方でリスクは現実的です。園児が集まらなければ赤字、保育士が採れなければ運営不能、自治体の制度が変われば収入も変わる。
配置基準の見直しのように、制度改正は経営に直接効きます。情報を追い続ける覚悟がない人には、しんどい仕事です。
経営者が意識すべきこと
私が意識しているのは、保育の質とお金の管理を切り離さないこと。質を下げて経費を削ると、結局は園児も保育士も離れます。
数字を毎月見て、稼働率と人件費を把握する。地味ですが、これを続けられるかどうかで生き残りが決まります。
保育園経営の年収に関するよくある質問
よくある質問
最後にひとつだけ。年収の数字を追う前に、開設予定地に園児がいるか、補助制度があるかを自治体に確認しに行ってください。それが、私が伝えられるいちばん確実な第一歩です。

